【月刊・白鵬】2年のブランクを経て復帰した、ある力士への思い (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 大喜鵬は場所前、網膜剥離の手術をしたこともあって、稽古ができないまま本場所を迎えました。西十両2枚目という、幕内を狙うには絶好の地位ですから、とにかく本場所で相撲をとって、たとえ一番でもいいから、勝ちたい。そういう気持ちで臨んだようです。

 必死な土俵が白星に結びつき、大喜鵬は12日目に勝ち越しを決めました。千秋楽にも勝って、9勝6敗。待望の新入幕を決めたのです。これには、私も驚きましたね。

 宮城野部屋に幕内力士が誕生したのは、2004年の私以来、9年ぶりのこと。横綱に昇進してからは、同じ部屋に幕内力士がいないため、私の土俵入りの際の太刀持ち、露払いは、ずっと一門の幕内力士にお願いしてきました。「身内」だけで固めることはまだ叶いませんが、大喜鵬の新入幕でその一歩を踏み出すことができたわけです。

 目も順調に回復した大喜鵬は、夏場所前の稽古でも意欲的で、胸を出す(稽古の相手をすること)私も彼の活力をひしひしと感じました。この勢いのまま幕内で暴れて、できれば三賞(殊勲賞、敢闘賞、技能賞。横綱、大関以外の優秀な力士に送られる)を狙ってほしいですね。彼ならできると思います。

 夏場所に向けて、私も納得のいく稽古ができました。もちろん目標は、朝青龍関に並ぶ、25回目の優勝です。東京で開催される場所では、2011年の秋場所(9月場所)以来、優勝から遠ざかっていますが、いい波に乗って進んでいきたいですね。

 さて、内モンゴル出身の蒼国来(そうこくらい)が角界に戻ってきました。

 彼は、2年前の「八百長問題」という不祥事に関与したとして、解雇を言い渡されていましたが、それを不服として、相撲界に復帰すべく活動をずっと続けていました。

 その間の身分は、協会所属の力士ではないわけで、土俵で稽古をすることもままならない状況でした。それでも、裁判で戦いつつ、自らの復帰を信じて、体を鍛えていたようです。そしてこの4月、ついに蒼国来の相撲界への復帰が認められ、名古屋場所(7月場所)から、元の地位の幕内力士として土俵に上がることが決まったのです。

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