【カーリング】世界選手権開幕。中部電力・市川美余は奇跡を起こせるか (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text&photo by Takeda Soichiro

 確かに今シーズン、前回の世界選手権で6位のスコットランドと2度対戦して、いずれも勝利を飾った。世界のトップクラスと互角に渡り合い、彼女たちの持ち味である、持久力の高いスイープ(アイスを掃くこと)、そして速いウェイト(ストーンの滑るスピード)でのテイク(相手のストーンを弾き出すこと)が世界でも通用することを証明。「技術的にはひけをとっていないと実感できた」(藤澤)と、チームにとっては大きな自信につながった。

 さらに、日本選手権を終えると、すぐに男子の優勝チームであるSC軽井沢とゲーム形式でのトレーニングを連日重ねてきた。長岡コーチが語る。

「やはり男子はパワーがあるので、想像もしなかった形で、いきなりゲームをひっくり返されてしまうようなショットをもらうことがある。世界に行くと、そういうことは本当に多くて、今回は(男子チームと戦うことで)劣勢の中でどうやったら優勢に持っていけるのか、考えて、考えて、石を運ぶトレーニングをひたすら積んできた。それが、本当にいい経験になっています」

 今大会で結果を出すためには、アイスの変化を意識しながら、自分たちのカーリングを貫くことだろう。そのためにも、ポイントになるのは、「いかに早くアイスリーディング(アイスの状態を読むこと)できるか」(市川)。それが実践できれば、「リスクを恐れず、序盤から石をためるカーリングを仕掛ける可能性もある」(長岡コーチ)という。そこで、自分たちが得意とする大量得点を狙う攻撃的なカーリングを存分に発揮できれば、チャンスも見えてくる。

 今季のシーズンが始まってから、主将の市川は常に欧州を舞台としたアウェーの戦いを頭の中で描いてきたという。
「大きなアリーナ、(アイスを取り囲む)たくさんの報道カメラ、大勢の観客をイメージしながら、トレーニングをしてきました」

 すべてはソチ五輪出場のためだ。

 世界は甘くはない。それでも、自分たちのカーリングで懸命に手を伸ばせば届くはず――。中部電力の"攻める"カーリングに、期待したい。

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