【スキージャンプ】W杯札幌大会。なぜ高梨沙羅は飛べなかったのか? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

 2日目も気象条件に苦しめられた。高梨の10人くらい前から向かい風が強まってきて、90m超えのジャンプを連発。しかし、高梨のひとり前のコリン・マテル(フランス・前日の優勝者)から急に風が弱まり、高梨の時はほぼ無風状態になっていた。それに加え、6人前からは向かい風の影響で飛び過ぎるとゲートを下げられていたこともあって助走速度が落ち、1本目は86mを飛ぶのが精一杯で9位に止まった。

「スタートを少し待たせるという選択もあったが、その前のインサム選手(イタリア)がスタートを少し待ったために、助走路に雪が積もってスピードが1km/h落ちていたのを見て、『若干悪くても』と思ってスタート合図をしたのは事実。終わった直後のファクターは完全に追い風を示していましたから。今回は結果を見ても、試合の3本のジャンプはすべてツキがなかったという印象ですね」と、苦笑しながら言う渡瀬弥太郎チーフコーチの言葉通り、2本目も数字上は向かい風1.19mでありながら、実際は条件が良くなかった。それでも86mを飛んで、5位まで順位を上げたのは彼女の意地もあった。

 それでも高梨は「空中でばたついていると言われたけど、そうなるのはテイクオフがおかしいということだし、テイクオフがおかしいというのはアプローチがおかしいということだから、それをしっかり見直したい。ただ、こういう難しい条件の中でも距離を出す選手はたくさんいるので......。そういう選手を見習いたいし、どんな条件でも自分のジャンプをできる選手になりたいです」と健気に言う。

 渡瀬コーチが「やっぱり地元開催ということで、あの小さい体でいろいろなものを背負っていたというのはありますね。ジャンプ台に来てからは、自分の時間というのがなかなか取れなかったと思うし。この後の合宿でその辺はどういう心境だったかと確認して、次のレベルアップにつなげたいですね。彼女にとってはひとつの修行の場でもあったと思います」と言うように、あまりのフィーバーぶりも彼女の負担になったのは確かだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る