【カーリング】PACC開幕。市川美余率いる日本代表はソチ五輪へ望みをつなげるか (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●文 text by Takeda Soichiro
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

 メンバー全員がウエイトの乗った精緻なテイクができるという最大のストロングポイントを保ったまま、いたずらにハウス内に石をためるだけではなく、状況に応じてショットを選び、ハウスをワイドに使うチョイスが増えていた。ショットに迷っても、藤澤と市川を中心にメンバー全員で意見を出し合い、基本的にはアイスの上であらゆる問題に対処できるようになった。監督、コーチを交えての作戦タイムも4回と、出場チーム中、最も少なかった。

 その理由を、コーチの長岡はと美氏は「(選手が)オンアイスでも、それ以外でも自立した」と分析する。それは、カーリングに欠かせないコニュニケーション能力が、遠征を重ね、移動や食事を含めて生活をともにすることで、飛躍的に高まったからだという。

 さて、PACCで最大のライバルとなるのは、2010年バンクーバー五輪で銅メダルを獲得した中国と、2012年3月の世界選手権で4位という大躍進を遂げた韓国だ。その実績からしても、両国の壁はかなり高い。

 とはいえ、成長著しい中部電力とは対照的に、中国、韓国の現状は決して万全とは言えないようだ。

「世界五指に入る」と評される中国のスキップ・王氷玉(ワン・ビンユ)は、今シーズンに入ってからショットの安定性を欠いている。主要なワールドカーリングツアーでも連敗を喫するなど、「スランプだ」と指摘する声も挙がっている。

 一方の韓国も、昨年のPACCで日本に3連勝し、世界4位になったキム・ジスン率いるチームが、今季のワールドカーリングツアーで苦戦。代わって、同ツアーで成績上位の、ジュニア世代のキム・ウンジュン率いるチームに代表の座を奪われている。そのチームと、中部電力はカナダ・エドモントンの大会決勝で対戦し、勝利している。
「昨年の韓国(キム・ジスン率いるチーム)は、試合運びが巧みでやりにくかったんですが、エドモントンで対戦したチームが代表として出場してくるなら、ある程度打ち合ってくれるのでやりやすい」(藤澤)

 中国、韓国の不振は、日本にとってまさに追い風だ。しかし、中部電力の選手たちが気を緩めることはない。主将の市川が言う。
「どこが相手でも、自分たちのカーリングをするだけです。そうすれば、自ずと結果はついてくる」

 彼女たちの目標はPACCではなく、その先の世界選手権、そしてソチ五輪である。代表決定戦でも、「ソチ」という言葉をためらわずに口にし、現実的にとらえていたのは、中部電力のメンバーだけだった。それが強がりではないことを、彼女たちはネイズビーの地で証明してくれるはずだ。

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