【体操】断ち切れなかった「負の連鎖」。内村航平が「敗因」を語る (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 その失点のせいでライバルの中国に逆転された日本は、一気に劣勢となった。

 その後、平行棒と鉄棒では堅実な演技で建て直したが、高いDスコア(演技価値点)を持つ中国にじわじわと離される展開に。そして最後のあん馬に向けて、少しでも中国との差を縮めておきたかったゆかで、最初の田中和仁が、「後方宙返り2回半ひねりから前方宙返り1回ひねりに入るとき、少し身体が歪んでしまった」と、左手をゆかに着いてしまうミスを犯して13.733点の低得点。ここで完全に、金メダルへの期待は途切れた。

 最後のあん馬では、田中和仁が予選と同じように落下。チーム最年少18歳の加藤凌平が跳馬とゆかに次ぐノーミスで14.766点と演技をまとめたものの、最後の内村は、地元イギリスのメダル獲得が決まって大騒ぎする状況での演技に。終盤まで順調だったが、「意識しないようにしようと思ったけど、耳には入ってきますから。地元の波にやられてしまった感じです」と苦笑するように、演技の最後、終末技となる直前の倒立からのひねりでバランスを崩し、かろうじて着地しただけ。得点は13・466点と表示され、イギリスとウクライナに逆転されて4位という結果になった。

「4位という表示を見て、何も言えなかったですね。今まで何をやってきたんだろうと思って、そればかり考えていました」と語る内村は、茫然としたまま、その場を動けなかった。だが、Dスコアを見た日本チームは、終末技が加点されていないとして審判に抗議。長い検討の末にそれは認められ、0.7点加点されて日本は2位に訂正された。

 ただ、銀メダルを獲得したものの、なんともすっきりしない結末となった。内村も、「2位に変わっても、『メダルだ!』という気持ちにはならなかったですね。団体の決勝は、ゆかからのスタートしかやったことがなかったのでいつもと感覚が違ったのと、『いい演技をしよう』として型にはめようとし過ぎたところもありました。いろいろ調整するというのを繰り返しながら、演技をやっていたような気がします」と語った。

 目標は金メダル――。「ミスをしたら勝てない」というのが、選手たちの暗黙の了解事項だった。だが、終わってみれば、大過失を犯さなかった中国に対し、日本はやってはいけないミスを連発して自滅した。「練習でもミスをしないことを常に意識してやってきたつもりだったが、五輪の雰囲気の中で、その練習通りにやるのが難しかった」と、内村は振り返る。

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