【レスリング】吉田沙保里があと2ヵ月で決断すべきこと (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ただ今大会は、計量時2キロオーバーまで認められるワールドカップ。吉田に勝ったジョロボワは計量直前に57キロまで落とし、2日後の試合で従来の59キロまで体重を戻して挑んでいた。一方、吉田はもともと減量がなく、体重は55キロのまま。この階級で4キロの差は大きい。オリンピックとはルールが違うため、一概にロンドンでの金メダル獲得に黄色信号が灯(とも)ったとは言いがたい。

 吉田が前回敗れたのは、北京オリンピックイヤーに入ってから中国で行なわれた同じくワールドカップ団体戦。連勝は119でストップしたが、そこから見事立ち直り、オリンピック2連覇を達成した。今回もオリンピックに向け、『いいクスリ』と見ることもできるだろう。だが、問題は時間だ。前回はオリンピック本番まで7ヵ月あったが、今回はオリンピックのマットに立つまで残された時間は、わずか2ヵ月――。

「相手には勢いがあり、パワーや力強さを感じ、警戒するあまりタックルに入る際に躊躇(ちゅうちょ)してしまった。勇気がなかったです。でも、ここで足踏みしているわけにはいきません。気持ちはロンドンに向けて切り替えました」と、吉田は語る。

 今回の敗戦を受け、豪快に飛び込んでいく本来の姿に戻すのか。それとも、世界中から研究され、タックル返しを狙ってくることが証明された今、接近戦を中心とする新しいスタイルへの改革を進めていくのか。8月9日、ロンドンでの吉田沙保里の戦い方が注目される。

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