【月刊・白鵬】史上初の6大関。激戦を制し、次の横綱になるのは?

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

夏場所に挑む6大関の現状や彼らの今後の可能性について語る白鵬。夏場所に挑む6大関の現状や彼らの今後の可能性について語る白鵬。第14回=6大関

夏場所(5月場所)の注目は
なんといっても史上初の6大関。
彼らの中から誰が抜け出すのか、
横綱が鋭い視点で分析する。

 薫風(くんぷう)爽やかな5月、大相撲夏場所が始まりました。

 例年なら、5月の第2週目の日曜日が初日となる夏場所ですが、今年からゴールデンウィークを絡める日程に変更されました。そうしたこともあってか、初日から大勢のファンの方に両国国技館に足を運んでいただき、賑やかなスタートとなりました。

 思えば昨年は、春場所(3月場所)の中止を受けて、「夏場所」ではなく、「技量審査場所」として開催されました。興業ではない形式を取ったことが、力士の士気という面で、はたしてどういう影響を及ぼしたかは定かではありませんが、正直、私の中ではまだモヤモヤした部分があります。そうした状況の中で私は、ただただ横綱として「優勝」という結果を残すことにこだわりました。

 それから1年が経ち、ようやく平常な形で夏場所が開催されました。これは私にとって、掛け替えのない喜びですし、これからも前だけを見て進んでいかなければならないと感じているところです。

 さて、夏場所の大きな話題は、史上初の6大関の動向です。

 前回の連載では、新大関・鶴竜の強さについて、私なりに検証してみましたが、まさに6人6様、それぞれが個性的で、力を持っている大関陣だと思っています。

 大関4場所目の琴奨菊は、そろそろ大関の地位にも慣れ、得意のがぶり寄りを生かした相撲が戻ってきています。同様に、私が度々苦しめられる稀勢の里も調子が良さそうです。先場所は彼らしい豪快さが見られませんでしたが、稽古場での感触からすると、何か大きなものを狙っている感じがします。

 日馬富士に関しては、このところ体調がすぐれない場所が続いています。しかし、昨年の名古屋場所(7月場所)で優勝した時の気持ちを思い出せば、今年も綱獲りのチャンスは巡ってくるでしょう。

 鶴竜は、夏場所前の横綱審議委員会稽古総見などで見る限り、少し疲れや焦りなどがあるように見受けられました。クレバーな力士でもあるので、新大関として臨む夏場所は、あれこれ考え過ぎてしまうところもあるのでしょう。でも、それを乗り越えて、無心に近い気持ちで土俵に上がれた時、鶴竜の力が爆発するのではないでしょうか。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る