【スキージャンプ】W杯で「サラ対決」に初勝利。
15歳・高梨沙羅の成長が止まらない

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純/アフロスポーツ●撮影 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

 この第11戦で優勝したヘンドリクソンは高梨の2歳年上、女子W杯初年度の今季に急成長した選手だ。昨年12月の第1戦で優勝して以来、通算6勝、2位が2回とダントツの強さを見せている。

 日本チームの渡瀬弥太郎女子チーフコーチは「2月のスロベニアでは、2日とも沙羅が先にいいジャンプをしてプレッシャーをかけて、いけると思ったのに相手はしっかり飛んできて沙羅は(2日間とも)2位。さすがに強い」と舌を巻く。

 だが2月23日の世界ジュニアでは高梨が飛距離で圧倒して勝利。「彼女は憧れの人であり、目標にしている人。その人に勝てたのは自信になった」という高梨は、母国開催となる蔵王でのヘンドリクソンとの対戦を楽しみにしていたのだ。

 この日の2試合の勝負を分けたのは、氷が溶けて滑りにくくなった助走路の攻略だった。

「アプローチが溶けていたので心配はあったけど、ちゃんと飛べて良かった」という高梨は、午後の1本目に84キロの助走速度で飛び出して男子のジャンプ台記録に並ぶ102.5m。それに対して助走速度が遅くなったヘンドリクソンは踏み切りが狂い、高梨とほぼ同じ向かい風という好条件を活かせず95.5mしか飛べなかった。

 高梨の強みは、幼い頃にバレエで鍛えたバランス能力の高さ。低い助走姿勢でしっかりとスキーに乗って滑ることができるため、小柄でも体重の重い選手に引けを取らない助走スピードを出せる。その長所を遺憾なく発揮したのだ。

 さらに、今季は助走が安定したことで、踏み切る時に膝から下の角度をキッチリと保ったまま立ち上がり、力をしっかりとジャンプ台に伝えることができるようになっている。そして、今の女子選手でそれができる高い技術を持っているのは、高梨とヘンドリクソンだけといえる。

 今季はユース五輪と世界ジュニアで優勝し、さらにW杯初勝利をあげた高梨と、蔵王での第12戦でW杯総合優勝を確定させたヘンドリクソンが圧倒的2強。11年世界女王のダニエラ・イラシコ(オーストリア)や09年世界女王のリンジー・バン(アメリカ)は、「沙羅とサラに勝つのは難しい」とあきらめ顔だ。

 翌4日の第13戦はヘンドリクソンが勝利。「まだ足りないところはたくさんあるが、(3日の)W杯優勝は自信になった」と話した高梨は2位。ふたりの「サラ」の対決は、今後も女子ジャンプをリードしていく注目の争いになるはずだ。

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