樋口新葉は「明るく楽しく前向きに」。新SPを披露し「強い女性を表現したい」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao / Dreams on Ice 2022

ひとつ上のステージへ

 五輪シーズンを全力で駆け抜けた樋口は、新たなシーズンをどう戦うのか?

「今日滑ったのは、強い女性を歌った曲なので、それを表現できたらいいなと思っています。ステップやジャンプのつなぎの部分はたくさん入っているので、そこを注目して見てもらえたらなって」

 アイスショー初日後、樋口はそう意気込みを語ったが、現状を直視していた。

「(挑戦するジャンプはあるのかという質問に)ケガの影響もあって、まだ跳べるはずのジャンプを戻しきれていなくて。まずはそこをクリアし、試合に出られる状態にしてから。トリプルアクセルを含めて、他のジャンプも質がよくなる練習をしていきたいです。(10月からの)グランプリシリーズに間に合うように練習を積んでいければ」

 彼女は焦っていない。

 樋口は北京五輪も、自ら距離感を計算しながら、勝算を立てて挑んでいる。五輪を前に、彼女はその出場がかかる全日本選手権にすべてを投入したのである。五輪まで1年をきって、彼女はこう話していた。

「プログラムづくりを含めて、いつも以上に敏感になって。攻める気持ちでやっていきたいです。五輪に出たい、メダルを獲りたい、というのは目標ですが、そのためにはまず、全日本でトップに立つような演技が必要で。今の自分はそこにはいない。できることを完璧にやりながら、ダントツで勝てるような自信を持って試合に臨めるように」

 迎えた全日本、彼女はSPではあえてトリプルアクセルを封印し、フリーで果敢に挑戦している。実践的、現実的な戦い方で確実にポイントを稼ぎ、ミスを最小限にした。結果、ライバルたちを退けて2位の座をつかむことになったわけで、考え抜いて取り組んだ答えだ。

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