坂本花織「緊張で頭とか心が大変じゃないかと」。世界選手権金メダルの裏側を明かす (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Getty Images

 途中から余裕を感じさせる滑りになった理由を、笑いながらこう話した。

「4本目の3回転サルコウあたりから、リンクに何かものが落ちているのに気がついたのでそれがすごく気になってしまって。これ何やろう、という気持ちになって集中が少し薄れたけど、それで集中しすぎないちょうどいい緊張感に戻れたなと思います。そこからはいつもの自分というか、いつもの朝練習のような感じだな、というのがありました」

 まさに坂本花織らしさ満開のコメント。技術点、演技構成点ともにこれまでの自己ベストだった北京五輪の得点を上回り、155.77点を獲得。合計も自己最高の236.09点にして圧勝し、樋口新葉の11位と合わせて来年の世界選手権3枠獲得を確定させた。

 周囲から「金メダル」と言われ続けるプレッシャーのなかでの見事な滑り。「今回メダルを獲っておかないと、今後はこういうチャンスはないと思っていたので、このチャンスをつかめてよかったなと思います」。坂本はこう話し、続けた。

「やっぱりこの世界選手権もそうだけど、今シーズンは本当にNHK杯だったり全日本選手権だったりで、今まで以上に『優勝候補』と言われるのがついてきていて、毎試合それがすごい緊張になったりしていました。でもそれを何回も乗り越えてここまでやってこられたというのは本当に自信になったし、こういう経験ができて幸せだったなと思います。この世界選手権で最後の最後まで、自分がやるべきことをやりきることができたことに、すごく満足しています」

 ロシア勢不在のなかで、圧巻の強さを見せた坂本。

「本当の強さというのは、毎年、毎年リセットされるので来シーズンはどうなるかわからない。自分はいつもスロースターターだから、また試合をたくさんやってどんどん、どんどん強くなれるように頑張っていきたいなと思います」

 目標にしていたものをすべてクリアするシーズンを終えた坂本は、また"新たな坂本花織の強さ"を追い求めていく決意を口にした。

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