坂本花織「緊張で頭とか心が大変じゃないかと」。世界選手権金メダルの裏側を明かす (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Getty Images

SP自己ベストに喜び爆発

 そんな気持ちで迎えた3月23日のSPは、最初こそ少し硬さのある滑りだったが、ダブルアクセルをジャッジ9人中8人がGOE点の5点を出すジャンプできれいに決めてからは、スピードに乗った滑りに。

「ジャンプもちょっと危なかったところはあったけど、なんとかハマってよかったです。スピードに乗ったなかでジャンプを3つともそろえられ、今の自分ができるベストの演技だったと思います」

 ノーミスの滑りで、自身初の80点台となる80.32点を獲得。キス&クライでその点数を見た時には、大声で何度も叫び声を上げるほどだった。

 SP2位のロエナ・ヘンドリック(ベルギー)には5.32点差をつけた1位発進。坂本のフリーは、前の滑走者のヘンドリックスが合計217.70点で暫定1位に立ったあとの演技となった。優勝が近づくなか、来年の世界選手権3枠獲得のためには2位以上が必須条件となり、プレッシャーはより大きくなった。

歓喜の金メダルに坂本節が炸裂

 そんななか、緊張した表情で滑り出した坂本は、前半の4本のジャンプを丁寧に決め、そのあとのフライングシットスピンを終えてからは、動きや表情にも余裕が出てきたように見えた。

 後半に入ると得点源である3回転フリップ+3回転トーループと、ダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループを1.74点と1.50点の加点のジャンプにしてきれいに決める。さらにステップシークエンスも大きさとメリハリのある坂本らしい滑りを見せてレベル4にし、最後の3回転ループも流れのなかでしっかり決め、コレオシークエンスとスピンでも加点を稼いで鮮やかに滑りきった。

「本当に緊張はすごくて......。五輪とはまた別のすごい緊張に襲われて、何か、頭とか心が大変じゃないかと思うくらいで。でも、最後は中野(園子)先生とか、周りの方々に背中を押されて出ることができたので、ここまできたらやるしかないと思って。それにこの大会では来年の世界選手権の枠取りもかかっていたので、なんとか3枠を死守しなければいけないという思いもあった。死んでもいいからやろうと思いました。順位や点数というのは、自分がやるべきことをやったらついてくると思っているので、とにかくノーミスでしっかりやろうと考えていました」

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