坂本花織「2度目の大会は自信がある」。北京五輪前に語っていた勝算と下馬評を覆した必然 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

2月17日、フリー演技の坂本。銅メダルを勝ち獲った2月17日、フリー演技の坂本。銅メダルを勝ち獲ったこの記事に関連する写真を見る 坂本のメダルの勝算が高かったとは言えない。NHK杯で優勝し、GPファイナルにロシア勢以外で唯一、出場した点で「伏兵」ではあったが、4回転もトリプルアクセルもなく、分は悪かった。メダル争いを考えたら、わずかなミスが命取りで、向こうはジャンプ1、2本転倒したとしても、十分に立ち直ることができた。

 しかも今シーズンの前半戦、坂本は苦しんでいた。

 昨シーズンまでのフリースケーティングは、映画『マトリックス』のプログラムで、豪快で軽快な滑りを見せ、彼女らしさが全開だった。今季新たに採用した『No More Fight Left In Me/Tris』は「女性の闘争、自由、解放」が根底にあり、テーマとして簡単ではない。本質にたどり着くには時間を要し、天真爛漫な彼女に合うのか、という疑念もあった。

 昨年10月、近畿選手権では底をついていた。

「これ以上ないくらいにボロボロでした。まだ練習をしきれていないので難しいですね。完璧にやり込まないといけないんですが。(プログラムの)ストーリー的には難しいところもあって。まとめて言うと"大人の女性"を表現することで、解放、自由、そのうれしさなんですが。まだ理解しきれず、やり込めていないのが、(不振の)一番の原因で」

 大会後に彼女は語っていたが、だからこそあえて連戦に挑んでいた。昨年8月のげんさんサマーカップを皮切りに、誰よりも試合のリンクに立ってきたのだ。

「連戦で試合の緊張感に慣れてくる、というのもあるかもしれません。微妙に試合の間隔が空くよりは続けてやろう、と。連戦のほうが、自分にはいいかなって。疲れは取りきれないですし、10代の機敏さはどこにいったんやって思いますけど」

 そう言って笑った坂本は、もどかしさを感じながらも前に進むことをやめなかった。

平昌五輪後「4年後はいける」

 何より、坂本は彼女だけの勝算があって、五輪に挑んでいた。前回、2018年平昌五輪では6位。その経験こそが、ひとつの根拠となっていたのだ。

「リンクはどこも一緒なのに、勝手に"オリンピックだから、全然違うリンク"って考えすぎちゃったのかもしれません。緊張しすぎて、体(の動き)が狂い始めて、正気じゃなかった、と思うので。あらためて考えたら、よう頑張ったなって(笑)」

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