坂本花織の勝負のカギは「スピード」。女子フィギュア日本勢3人の意気込みと戦い方

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

「全日本以上の演技をすることと、SPからトリプルアクセルを入れたいです。思いきって練習してきたことを出せるように、何も考えずに滑れたらいいなと思います。トリプルアクセルを2本入れることもそうですけど、もし失敗してしまっても、(フリーで)150点に近い点数や超える点数を出せればベストでいいなと思っています。

 トリプルアクセルを跳ぶということは、オリンピックの前からずっと目標にしていたので、それをとりあえず達成しないと、(現役選手を)やめるとまではいかないですけど、とにかく現役のうちに跳びたいということを考えて、ケガを治して練習に取り組みました。自分ができるということをアピールするためにも必要でしたし、すごく大きな点数になるので、そこはすごく考えていました」

 リスクの大きなジャンプであるトリプルアクセルだが、いまの樋口にとっては大きな武器となった。まずは、目標に掲げるSPでのトリプルアクセルを成功させ、上位争いの一角に食い込むこと。そのうえで、競技人生の集大成が詰まった、樋口らしさが存分に発揮されているフリー『ライオンキング』を、はつらつと演技してもらいたいところだ。

【河辺愛菜「SPもフリーも自己ベストを」】

 全日本選手権で3位に食い込んで五輪代表切符を手に入れた河辺愛菜は、「びっくりしているのが一番大きい」と、神妙な顔つきで代表決定会見に臨んでいた。だが内心は「あの大きな舞台で滑れるんだというワクワク感が大きかった」と、実は度胸もある17歳だ。

 五輪出場を意識し始めたのは、今季GP2戦目のNHK杯で2位となり、表彰台に立ってからだという。それでも指導する濱田美栄コーチは、河辺にプレッシャーがかからないように、目標設定を五輪ではなく、四大陸選手権にしたそうだ。あくまでも挑戦者として無欲で出場できた全日本選手権では、SP、フリーともにトリプルアクセルを思いきりよく跳んで、五輪代表の座をたぐり寄せた。

 初体験となる晴れ舞台でやるべきことは決まっている。

「北京ではSPとフリーの両方でトリプルアクセルを決めたいと思います。自分のできる精いっぱいの演技をしてSP、フリーともに自己ベストを出して、できたら(合計)215点を獲得したいです」

 どこまで平常心を保ち、自分の演技を全うできるか。若さと勢いの流れに乗り、キレのいいトリプルアクセルをしっかりとSPとフリーで跳ぶことができれば、チャンスは生まれるだろう。

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