坂本花織の勝負のカギは「スピード」。女子フィギュア日本勢3人の意気込みと戦い方 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

【樋口新葉はトリプルアクセルにかける】

 大技がない坂本がロシア勢に対抗して上位争いに加わるためには、誰にも負けないスケーティングスピードを"本来の速度"に上げて演技を見せることだろう。ここまでの試合では、持ち前のスピードをセーブして、ジャンプやステップ、つなぎの動作を乱さないためにコントロールしてきた。中野園子コーチも「もっとスピードを出さないといけない」と、勝負のカギはスピードだと語る。果たして本番に向けてどこまでスピードアップを図ってくるかも注目してみたい。

「SPもフリーもパーフェクトな演技で、前回よりもいい成績で終わりたいです。前回の平昌大会は出られたことがうれしくて、浮かれた気持ちが大きかった。今回は全日本選手権優勝という責任もあるし、覚悟が4年前と全然違う感じ。やるぞという気持ちです」

 2度目の五輪で、トレードマークの笑顔を輝かせてほしいところだ。

 一方、有力候補でありながら平昌五輪代表を逃して悔し涙を流した樋口新葉は、4年越しの願いを叶えて北京五輪代表になった。この4年間はただひたすら、五輪シーズンの代表最終選考会となる全日本選手権に照準を合わせてきたと言っても過言ではない。4年前の全日本選手権でミスを連発して自滅した同じ轍は踏まないと誓ったからだ。さらに、一時は諦めかけたトリプルアクセルも、習得を目指して練習を積み、ついに五輪に間に合わせて試合でも跳ぶレベルまで持ってきた。

 全日本選手権ではSPでの挑戦は回避、フリーでは着氷したもののステップアウトだった。「武器」として戦いを優位に運ぶまでにはまだ至っていなかっただけに、その後の約1カ月の調整期間でどこまで成功率を上げているか。樋口が初出場の五輪で上位争いに食い込むには、トリプルアクセルをSPとフリーで成功させることに尽きる。

 団体戦の女子SPに出場して初舞台に立った樋口は、ほどよい緊張感を漂わせながら落ち着いた表情で『ユア・ソング』を伸び伸びと滑り、ステップでは音楽に溶け込むような演技を披露した。会心の出来に笑顔でフィニッシュポーズを決め、74.73点を出して女子2位となり、決勝進出に貢献した。団体戦では「ミスはできない。一番安定できる演技でいく」と、トリプルアクセルを回避したが、個人戦で挑む覚悟はできている。

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