羽生結弦「自分のスケートを絶対に出しきる」。右足首に痛みも北京五輪で新しい世界を見せた (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

4回転アクセルでは転倒したものの鋭い回転を見せた4回転アクセルでは転倒したものの鋭い回転を見せたこの記事に関連する写真を見る そんな状況で臨んだフリーは、精神的にも肉体的にも追い込まれている状況だった。羽生は気持ちをこう明かした。

「『絶対に(4回転)アクセルを降りる!』と思っていました。絶対に回りきるんだ、と。それを跳ぶために北京五輪に来たから、自分のスケートを絶対に出しきると......」

 その思いが、回転速度の速い、キレ味のある4回転アクセルにつながった。

「手応えはよかったですよ、すごく。『あっ、これが4回転半の回転速度なんだ』って感じました。そこからランディング(着氷姿勢)をつくるのはちょっと危険すぎるかもしれないけど、人間にはできないことかもしれないけど。でも、僕なりの4回転半はできたのかなと思いました」

 これまでなかなか見られなかった世界を、やっとのぞいた瞬間だった。

【ミスのなかでも見せた「らしさ」】

 だが、着氷した右足首へのダメージは大きかったのだろう。次の4回転サルコウはこれまで長く付き合い、羽生の体の一部になったとも言えるジャンプ。踏み切りに狂いはなかったが、着氷では足を踏ん張れずに崩れるように転倒してしまった。SPを終えた時点で3位の宇野昌磨とは10.75点差。このふたつの転倒でメダル争いに食い込む確率は極めて低くなった。

 しかし、そこからは羽生結弦らしさを見せた。当初予定していた五輪へ向けての大技のひとつ、トリプルアクセル+3回転ループは足首の故障があったために封印し、昨年12月の全日本と同じトリプルアクセル+2回転トーループにしたが、その流れで跳ぶ次のジャンプは、全日本で跳んでいた3回転ループから基礎点が0.40点高い3回転フリップにしてきれいに決めた。

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