「自分は本当に幸せ者」。三原舞依、北京五輪落選から四大陸選手権を完全制覇 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 フリースケーティングでは、本人も認めているように緊張が透けて見えた。練習ではすべてノーミスでも、本番一本で崩れるのがフィギュアスケートの難しさだろう。舞台に立ったら、たったひとりで不安と対峙しなければならない。ネガティブな思考にとらわれると、体がどうあがいても動きは悪くなる。会場では、韓国の選手が次々に高得点を記録していた。

「ショート以上に緊張がすごくて、始まる前から涙をこらえていました」

 三原は言う。

「(本拠地の)神戸でノーミスだったのに、全日本では思いどおりにできなくなって。今回も、同じようになったらどうしようと不安でした。でも、周りの方々が『あれだけ練習したんだから大丈夫』って言ってくださって。一つひとつを大切に自分がやってきたことを信じて滑ろうって」

 そしていまや彼女の代名詞になった『フェアリー・オブ・ザ・フォレスト&ギャラクシー』で、妖精と化す。

 3回転ルッツ+3回転トーループ、ダブルアクセル、3回転フリップ、3回転サルコウと完璧に降り、高い出来ばえ点(GOE)もたたき出した。コンビネーションスピンも優雅で、力強さにこだわってきた練度の高さが出ていた。得点が1.1倍になる演技後半のジャンプも、ダブルアクセル+3回転トーループ、3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループ、3回転ループと次々に成功。スピン、ステップ、コレオと曲の盛り上がりとともに、観客をもうひとつの世界へ引き込む。最後のスピンはほどけたが、体力を出し尽くしたからだろう。万雷の拍手を一身に受けた。

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