「何が何だかわからず頭のなかが真っ白」と歓喜。荒川静香の金メダルは日本のフィギュアスケート人気に火をつけた (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 2本目の3回転サルコウ+3回転トーループが、3回転+2回転になったのは悔しかった。「直前になってコーチから最初の3回転ルッツ+3回転ループを3回転+2回転にするように指示されましたが、その次の3回転+3回転は外すつもりがなかった。でも最初にジャンプを跳んだ瞬間にバランスを崩したので(トーループを)2回転に変えた」と説明した。これまでなら失敗をすると滑りが小さくなる傾向があったが、この日は違った。「不思議な雰囲気だった」と荒川は言う。

 演技後半の3回転ループが2回転になるミスはあったが、GOE(出来ばえ)減点はない演技。演技構成点でもスケーティングスキルは全選手中唯一の8点台をもらい、最高の63.00点と高い評価。フリーもSPに続く自己最高の125.32点で合計を191.34点にしてトップに立った。

 そんな荒川を、最終滑走の女王、スルツカヤは上回ることができなかった。

 スルツカヤが武器にするのは3回転ルッツ+3回転ループだった。だが、冒頭で単発の3回転ルッツになるスタート。そのあとの3回転サルコウからの3連続ジャンプはしっかり決めたが、3回転フリップは着氷が乱れる。基礎点が1.1倍になる演技後半に3回転+2回転の連続ジャンプを2本入れてリカバーしたが、その間に入れた3回転ループで転倒するミスが出た。結局、フリーはこのシーズン最悪の114.74点にとどまり、合計181.44点で3位という結果になった。

「ビックリして言葉が出ないくらいで。なかなか信じられなくて何が何だかわからず、頭のなかが真っ白になってウイニングランをしていました」

 荒川はそう語った。「6.0システム」から新採点方式に変わったことで、スピンやステップはこれまで取り組んだことがないものをしなくてはいけなくなり、レベルアップに時間がかかって悩んだという。五輪シーズン中にはステップのレベルを上げたいからと、コーチを変更した。ステップだけでなくスピンもしっかりレベルを上げ、確実にポイントをとれるようになった。

 フリーの使用曲は『トゥーランドット』。シーズン当初に使用していた『幻想即興曲』はSPに回し、2004年世界選手権優勝を決めたこの曲にした。「昨年(2005年)、リンクに来て実際に音楽を流した時にふと、このリンクは『トゥーランドット』で滑りたいと思いました」との理由からだ。

 日本の成績不振のイメージを、一気に吹き飛ばした荒川の金メダル獲得。少し前から盛り上がり始めつつあった、日本のフィギュアスケート人気をホンモノに押し上げる大きな契機になった。

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