三原舞依にとってスケートリンクは「笑顔を生んでくれる場所」。五輪代表逃すも拍手が鳴り止まなかった

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「温かいお客さまの前で演技ができてうれしかったです。少しでも力強く、感謝の思いを表現したくて。イタリア大会が終わって、ブラッシュアップをしました。(振付師の)デビッド(・ウィルソン)さんに撮った動画を送り、フィードバックしてもらって、というのを重ねて。ディテールを分析して、一つひとつ大切に最後まで集中して滑ろうと思っていました」

 練習は裏切らなかった。ダブルアクセル、3回転ルッツ+3回転トーループ、3回転フリップと3本のジャンプすべてクリーンに降りた。スピンも、ステップもすべてレベル4だった。73.66点は5位だが、2位と1点差。自己ベスト更新で、文句のない点数を出した。

【観客の心を打つ演技】

 しかし12月25日のフリースケーティング、三原は好調ではないことを自覚していた。練習拠点の神戸ではノーミスの練習ができていたが、上京後はフリーの調整が思わしくなかった。6分間練習から足の運びが重く、スケート靴を何度となく気にしていた。前の選手の得点発表に時間がかり、寒さから手をグーで握りしめ、熱い息を吹きかける姿もあった。

 ただ三原は、命を削って火を灯すような演技を見せている。前年から継続の『フェアリー・オブ・ザ・フォレスト&ギャラクシー』に体を躍らせ、冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプで華麗に着氷した。ダブルアクセル、3回転フリップ、3回転サルコウと順調で、練習を重ねてきたスピンもレベル4を勝ち取り、"妖精の力を借りた"ようだった。

 しかしダブルアクセル+3回転トーループが、シングルアクセル+1回転トーループになってしまう。アクセルの前のブラケットで壁に寄りすぎ、カーブでミスをした。そのあとのコンビネーションで2回転トーループを3回転トーループにしたが、最後のコンビネーションはリピートでカウントされず、ひとつのミスが影を落とすことになった。

 得点は133.20点で、フリーも5位だった。合計206.86点で4位。決して悪い成績ではない。しかしアクセルが決まって、リピートもなかったら、五輪選考では有利だっただけに......。

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