本田真凜、天才だった自分を超える戦い。全日本フィギュアを終え「やっぱりスケートってすばらしい」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 25位以下が、フリースケーティングに進めない。彼女はどうにか足切りをまぬがれ、希望をつないだ。

「ショートで使う『Seven Nation Army』は歌詞が注目で。戸惑いや葛藤のなかで、立ち向かう強い女性を歌った歌詞です。今の自分の気持ちと重なるところがあります」

 本田は思いを込めて語っていた。スケーターとして強くなりたい。彼女の真摯な気持ちがにじみ出ていた。

「練習の状態は、少しずつ前に戻っていると感じていて。自分の演技の前、アイスダンスの演技を見ていたら、涙が出るほど感動しました。私もそういうスケートがしたいなって、自分だってできるんだぞって久しぶりに思いました。競技生活も後ろから数えたほうが早くなってきましたので、一つひとつの試合を大切に、来年もここに戻って来られるように。スケートを続けるなら、過去の自分を超える演技をしたいなって思っています。

【悪戦苦闘、でも滑り続ける】

 彼女は、天才だった自分を超えようとしてきた。順調とは言えないキャリアだろう。単刀直入に言って、悪戦苦闘だった。

「自分はジュニアの時、試合で練習以上のものができるとやっていました」

 当時のインタビュー、本田はそう告白していた。

「世界ジュニアで優勝した演技前とか、早く日本に帰りたいな、と思っていました(苦笑)。昔は人が何回もやってできることを、自分は結構すぐにできてしまったんです。でも、それは必ずしもいいことではないんです。たとえば、ジャンプはコツコツ習得した選手よりも安定しない。今は感覚的な貯金はゼロだと思い、少しずつ積み上げている感じです」

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