羽生結弦の新SP、「音楽の解釈」のジャッジは10点満点。「自分の代表プログラムとなるものだという思いはある」 (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【すべてがシンクロした演技】

 公式練習で初めてステップシークエンスを見た時に感じたのは、羽生が何かすごく大きなものに翻弄されているような感覚だった。そんな空間のなかでもみくちゃにされながらも、羽生は自分の意思を捨てることなく泳ぎ続けているようだ、と。

 後半のトリプルアクセルも以前よりスピードアップした回転できれいに決め、スピンとステップはすべてレベル4の完璧な演技。その得点は、より熟成させた『バラード第1番ト短調』をシームレスに演じた2020年四大陸選手権で出した自己最高得点に0.51点だけ及ばない111.31点という高得点だった。

「ジャンプ構成は自分ができる最大の難易度ではないと思うけれど、このプログラム自体の構成はジャンプの前に入っているクロスはひとつくらいで、ほとんど入れていないところもぜひ見ていただきたいなと思います。

 表現のほうも『バラード第1番』だったり『SEIMEI』だったり、本当に自分の代表プログラムとなるようなものだという思いはある。まだ洗練されてないかもしれないけど、具体的な物語や曲に乗せる気持ちも強くあるプログラムになっているので、ジャンプだけではなく全部見てもらえるようにしていきたいなと思います」

 その演技を見ていて思わずうなり声を上げてしまったのは、体の動きだけではなく、スピンも技の構成を綿密に考え、後半の激しい曲調のなかでは微妙に変化する音のテンポに回転速度までをもすべてシンクロさせている、完璧な滑りだったからだ。49.03点を獲得した演技構成点のなかでも、「音楽の解釈」ではジャッジ9名中8名が満点の10点を出してスコアも10点になったことが十分に納得できた。

 この『序奏とロンド・カプリチオーソ』をこれからさらに、『バラード第1番』や『春よ、来い』などのエキシビションプログラムのように洗練させ、熟成させていきたいという羽生。彼の持ち味でもある、その時々の感情や気持ちを演技に反映させて微妙なアレンジを加えた表現で、その時の「羽生結弦」をどう見せてくれるかも、このプログラムを見る楽しみのひとつになった。

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