河辺愛菜が全日本フィギュアのSPで見せたトリプルアクセルだけではない改善。「自分は挑戦するしかない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【スピン、ステップでも見せた改善】

 観客を味方にしたのか。河辺は、基礎点が8点(他の多くの女子選手が飛ぶダブルアクセルは3.30点)になるトリプルアクセルを鮮やかに成功した。その勢いで、近畿選手権では失敗した3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプも成功で11.45点を記録。最後のジャンプ、3回転フリップも危なげなく降りた。

 加えて、スピン、ステップもすべてレベル4だった。トリプルアクセルは強大な武器だが、それだけに頼っているわけではない。大技に取り組みながら、技術を全体的に改善させてきた。たとえばプログラム全体を盛り上げるため、ステップで上体の動きを多く入れ、練習に時間を費やし、それがレベル獲得につながった。

「今日はすべてレベル4を取れたのがうれしくて。毎回、どこかで落としてしまっていたので。メンタル面でも成長できたのかなって思います。国際大会で緊張する戦いを経験することで、成長できたのかもしれません」

 トリプルアクセルに挑むという冒険心が、彼女を強くした。SPは74.27点で堂々の3位。最後、雪を拾って天に向かって投げる振り付けのあと、勢いよく両腕を振り下ろしたのは、会心の演技の証拠だ。

 北京五輪の扉が見えた。

「もちろん、全日本に出るからにはオリンピックに選ばれたいという気持ちは強いです。でも、あまり考えすぎると、演技に集中できなくなってしまうので。一番は、自分の最高の演技ができるように」

 河辺はおっとりとした口調だが、競技者としての野心もにじむ。そのバランスが、スケーターとしての幅を広げているのか。

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