村元哉中&髙橋大輔は「ふたりにしかできない」と運命を感じたプログラムを手に入れ、「100%の演技」で全日本に挑む (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【ふたりを引き立てるプログラム】

 アイスダンスは、ツイズルひとつをとっても簡単ではない。ひとりではなく、「ふたりで合わせる」という意識は大事だが、合わせることに夢中になりすぎると、足元の狂いが出る。わずかなズレがふたりだと命取りで、なかなか取り戻せない。緻密さが求められる競技で、だからこそ時間が必要なのだ。

 圧倒的に不足する時間を、ふたりはトレーニングの深度で縮めてきた。アイスダンスで平昌五輪に出場した村元がけん引し、髙橋は天性と経験と鍛錬で向き合った。そこに加速度的成長の正体が見える。

 RDの『ソーラン節&琴』という曲に出会えたのも、躍進を可能にした。村元は、「ふたりにしかできないプログラム」と、運命を感じたと言う。北国の雄壮な漁の風景を大らかに演出しながら、後半はヒップホップで弾むように情感を盛り上げる。かつて、シングルで世界を制した髙橋のリズム感や基本的スケーティングの質と速度が際立つ。

 一方でFDは『ラ・バヤデール』で悲恋のなかにある甘い一瞬を、しっとりと熱く滑る。昨年からの継続だが、ステップもリフトも技の流れが滑らかになった。技術精度が高まり、出来ばえ点(GOE)も増加。髙橋も、「昨年と同じ曲ですが、(観客を)引き込めるようになったと思うし、新たな発見もあって」と手ごたえを感じている。

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