全日本選手権で王者・羽生結弦に宇野昌磨、鍵山優真はどこまで迫れるか。ポイントは「300点超え」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【鍵山は着実な道を選択】

 鍵山はシニアデビューの昨季、世界選手権2位まで一気に駆け上がった。優勝したチェンとは29点強差と力の違いは見せつけられたが、フリーでは終盤のジャンプ2本で着氷を乱すミスをしながらも合計は291.77点にして、300点台への可能性を見せた。今季は、「昨シーズンと同じように挑戦する意識を持って戦いたい」(鍵山)と、フリーの4回転2種類3本の構成をさらに進化させ、4回転ループを入れた3種類4本の構成に挑んでいた。

 コロナ禍で変則開催の昨季とは違い、GPシリーズも通常開催になった今季。鍵山は4回転ループの精度をなかなか上げきれなかったなかで、シニアとして実績を着実に積み上げていくことを選択し、4回転2種類3本の昨季の構成に戻してイタリア杯とフランス杯を連勝。GPファイナル進出を決める結果を残した。

 それでもフランス杯優勝で獲得ポイント1位でのGPファイナル進出を決めたあとは、「ファイナルで優勝を争える実力があるかと言われれば、まだそうでもない。ここまでの2試合を振り返れば、まだまだ実力が足りないなと感じる。4回転ループだったり、後半でももっといいジャンプが跳べるように練習していきたい」と冷静に自己分析していた。

 GPシリーズは昨季と4回転の本数は同じとはいえ、4回転トーループを後半に入れるなど、若干レベルアップした構成。これで4回転ループを入れられるようになれば、要素の基礎点合計は昨季の世界選手権より4点ほど高くなる計算だ。

 SPでは、確実に100点台をとれる安定感を身に着けてきていて、フランス杯は後半のトリプルアクセルでステップアウトのミスをしながらも、昨季の世界選手権で出した自己最高に0.32点まで迫る100.64点。今季はGOE(出来ばえ点)加点を昨季より上積みできるようになっていて、演技構成点も9点台が多くなっている。フランス杯では、滑りや表現の技術を高く評価されているジェイソン・ブラウン(アメリカ)に、SPは1.1点差でフリーは2.52点差と、ジャッジは高く評価した。300点台は手のうちに入れている。

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