NHK杯連覇の坂本花織に迷いなし。大技はなくても「自分を超える演技ができる」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

 ただ、技術面でミスが出ても、演技構成点で9点台が出ているので、そこは成長しているなと満足している部分もあります。全体的な満足度は85点くらいです」

 リンクを疾走するスピード感抜群のスケーティングと、高さと幅のあるダイナミックなジャンプ、そして安定感のある演技は、十二分に魅力的だった。トリプルアクセルや4回転ジャンプを跳ばなくても、坂本の演技はフィギュアスケートの醍醐味を存分に味わえるものだ。

 現行ルールでは、採点に占めるジャンプの比重が高く、基礎点が高い4回転やトリプルアクセルを跳べば、それだけ得点増を見込むことができる。だからこそ、大技がない坂本は自分がどう戦うべきかをしっかりと見据えている。

「大技がない分、他の(エレメンツの)クオリティを上げていかなければいけないですが、最近は(ジャッジが)評価をしてくれるのでほっとしています。このシーズンはどの試合も大事だし、ひとつも大技がない分、ひとつもミスできない状況で、クリーン(な演技)でやらないといけないと思っているので、ひたすら練習で曲を掛けて、いかに試合でノーミスでできるかを練習の時からやってきました。

 SPもフリーも安定したジャンプを跳ぼうとしているので、いまはスピードをセーブしていてまだ本来のスピードにはなっていない。スピードに乗っていけると、高さと幅のあるジャンプを跳べると思うので、帰ってからの練習でしっかりとやっていけたらいいなと思っています」

 シニアデビューシーズンだった18年平昌五輪で総合6位に入賞してから、坂本は世界トップへの階段を一歩一歩上がってきた。新進気鋭のフランス人振付師のブノワ・リショー氏とタッグを組んできたことが、大きな飛躍の要因のひとつになったと言っても過言ではない。

 リショー氏は、坂本らしさをプログラム作りで存分に引き出し、なおかつ、彼女のポテンシャルを先に導くような難易度の高いプログラムを提供し続けてきた。坂本もリショー氏を信頼して、ユニークで斬新で個性あふれるプログラムを滑りこなしてきた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る