宇野昌磨「今はワクワクしています」。NHK杯で掴んだジャンプの手応え「もうひとつ前に進める」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 後半に入ると、SPでは軽々と決めていた4回転フリップがパンクして2回転になり、そのあとの4回転トーループもつんのめるような着氷になって連続ジャンプにできなかった。最後のトリプルアクセルからの3連続ジャンプはしっかり決め、見せ場であるステップシークエンスもレベル3ながらメリハリのある力強い滑りで締めくくった。

「これまでは最初のジャンプを失敗していたので、そこで追い込まれてから我慢する力がついていたと思う。でも今回は最初で成功したから、後半は気持ちのゆるみが出たのかもしれません。これまでの練習でループとサルコウが跳べていなかったのが、試合に出てしまいました」

 こう言って苦笑する宇野のフリーの得点は、2019年四大陸選手権で出した自己最高より10点弱低い187.57点だった。それでもSPの貯金もあって合計は自己最高の290.15点で、2位のジョウには29.46点差をつける圧勝。ジョウとともにGPシリーズポイントを28点にし、3年ぶりのGPファイナル進出を確定させた。

「4回転ループはもっと安定させられるような気がしているので、練習の時の4回転フリップくらいの確率になれば、後半に入れるような挑戦もできる。だからループはどこにおいてもフリープログラムとしてまとまるようなジャンプにしたいですね。4回転サルコウもループと同じで気持ち的には体力に余裕のある1番目にしたいジャンプだけど、今回は何か感覚をつかんだかもしれない。早く中京大に帰って練習をして自分のものにすれば、もうひとつ前に進めると思って、今はワクワクしています。ファイナル進出も大きな大会がもうひとつ増えたということだから、また成長した自分を見せられるようにしたいです」

 2018年平昌五輪までは2位ばかりで「シルバーコレクター」とも言われたが、その頃は2位になる大変さもわかっていたため、嫌だとは思わなかったと言う。だが、その立ち位置は、優勝争いをしたうえの2位ではなく、よくて2位という状態だった。それに満足しているのではないかと思い、トップ争いをする選手になりたいという気持ちが芽生えてきた。

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