女子フィギュアスケートで最強ロシアの新たな勢力図。GPファイナルの枠を独占する可能性も (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo Images

 ワリエワのフリー『ボレロ』は難しい曲だ。初挑戦した昨季は、高難度ジャンプに加えてしっかり得点をとるために作られた難しいつなぎもあるプログラム構成をこなすのに精いっぱいで、表現しきれていない面もあった。だが今季は、徐々に克服してきている。シニア初シーズンで五輪女王まで駆け上がったアリーナ・ザギトワが、フリーではジュニアからのプログラムを2シーズン続けて勝負のシーズンに完成させたように、ワリエワは『ボレロ』を磨き上げて五輪シーズンにぶつけようとしている。エテリ・トゥトベリーゼコーチの"勝利の方程式"を再び実践していると言える。

 それに続くのは、昨季の世界選手権優勝のシェルバコワで、11月上旬のイタリア杯では、SPは後半に予定していた3回転ルッツ+3回転ループが、3回転ルッツ+2回転トーループになるミスをして3位だった。だがフリーでは世界歴代3位の165.05点を獲得し、合計を236.78点にして逆転優勝。フリーは4回転を冒頭のフリップだけにする抑えた構成だったが、動きにはキレがあってすべてのジャンプも完璧に降りる、迫力もある完成された演技だった。

 トリプルアクセルがないためSPで出遅れるのが彼女の弱点だが、シニア初シーズンにはフリーで4回転ルッツを2本決めている。昨季からその構成を封印しているが、勝負がかかった時にどんなジャンプ構成になるかも含めて注目したい。

 GPファイナルを考えれば、6枠すべてをロシア勢が独占する可能性もある状況だが、続く3番手争いとなると熾烈な状況だ。足のケガの治療のためにNHK杯を欠場したトゥルソワは、スケートアメリカではSPで77.69点を獲得すると、フリーでは4回転を冒頭のルッツだけに抑えた構成で154.68点をとり、合計232.37点で優勝している。GPシリーズ離脱は北京五輪代表争いへ向けてのものだろうが、体調を整えてくればフリーで4回転4種類5本という驚異のジャンプ構成も持っているだけに、一気に抜け出してくる可能性は大きい。

 そしてトゥルソワに続くのはSPとフリーでトリプルアクセルを3本跳ぶエリザベータ・トゥクタミシェワになる。スケートカナダでは、SPはノーミスで81.24点を獲得し、フリーは中盤の3回転フリップが4分の1回転不足になるミスが出たが合計を232.88点にして2位になっている。自己最高は2019年世界国別対抗戦の234.43点。ジャンプの細かなミスもあり、GOE(出来ばえ)加点がもうひとつ伸びていないのが弱点ではあるが、それを克服してくればベテランの安定感があり、代表争いにも食い込んでこれそうだ。

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