羽生結弦、宇野昌磨、鍵山優真、佐藤駿......本田武史が今季の男子フィギュアを展望 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 鍵山選手がトータルバランスの優れている選手だとすると、佐藤選手はジャンパーです。ただ、今季のプログラムを演じる姿を見ると、表現や滑りの部分でもすごく成長しているのが見えるので、その部分が評価されてくると、さらに高得点が望めるでしょう。

 これで12月の全日本選手権での表彰台争いには、羽生選手、宇野選手、鍵山選手の三つ巴の戦いに佐藤選手が加わって、すごく面白い戦いをしてくれるのではないかと期待しています。

 そんな日本勢の前に立ちはだかるのは、世界王者のチェンと、そのチェンを抑えてスケートアメリカで優勝したヴィンセント・ジョウのアメリカ勢2人でしょう。

 ジョウは昨季の世界選手権でSP落ちをしてしまい、すごく悔しい思いをしたと思います。しかしそこからしっかりと調整してきて、持っている才能が出てきていると思います。4回転ジャンプは跳んでいましたが、4分の1回転足らない「q」マーク判定がちょっと多かったので、それが今後、どういうふうに影響してくるかというところも見ていかなければいけないと思います。

 チェンについては、スケートアメリカでは4回転ジャンプがパンクしていたのでタイミングが合っていなかったんだなという感じでした。ただ、チェンがシーズン初戦からこれだけの4回転を詰め込んだプログラムを持ってきたのは初めてです。これまでの戦い方は、シーズンが深まるとともに難度や本数をちょっとずつ増やしていくというものでした。これだけたくさんの要素を1戦目から持ってきたというのは、五輪シーズンにかける思いというのもあるでしょうし、これをこなしていく必要があると再確認したのではないでしょうか。

 北京五輪はハイレベルな戦いになりそうですが、ただ、4回転の本数が増えることによって、ミスをするリスクというのもすごく高くなると思います。そのなかで、しっかりとミスなく演技をまとめた選手がオリンピックで王者になるのだと思います。もしかするとチェンは、オリンピックまでに現時点のフリープログラムに5本入っている4回転を1本減らすとか、今後の調子や練習のやり方によって戦略を変えてくる可能性もあるでしょう。

 オリンピックという大会で一番いい演技をして優勝したい。選手はそう思っていると思いますし、安全策を取ったから完璧にできるかという保証はないので、みんな、やはり攻めるプログラムになるのかなとは思います。ジャンプ大会になりそうな雰囲気はありますが、そのなかでプログラムの個性を出していける選手が、結局は強いのではないかと思います。

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