世界最高得点デビューの一方で引退も続々。激しすぎるロシア女子の新旧交代

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 今から2シーズン前、15歳で鮮烈な世界デビューを飾って一世を風靡した「ロシア3人娘」は記憶に新しいところだが、次から次へと新鋭たちを輩出するフィギュア王国ロシア女子の強さはとどまるところを知らない。

 その「ロシア3人娘」のなかで今季注目を集めそうなのが、スケートアメリカでSP、フリーともに1位の合計232.37点で完全優勝したアレクサンドラ・トゥルソワだ。SPではトリプルアクセルを回避したが、フリーでは、4回転ルッツと2本の3回転ルッツを含む計7度のジャンプをミスなく跳び、全ての要素で加点を得た。

「今日は4回転がひとつだけの簡単な内容でしたが、(次戦からは)もっと内容のレベルを上げていきたいです」と、意欲満々だったトゥルソワは、女子として初めて4回転ルッツや4回転+3回転の連続ジャンプを成功させた。フリーではルッツ、フリップ、サルコウ、トーループの4種類の4回転を計5本組み込み、全て着氷できる能力の持ち主である。基礎点が1.1倍となるプログラム後半、疲れが出始めるなかで難易度の高いルッツジャンプを2本も平然と跳ぶタフさもある。

 現在17歳のトゥルソワは2019-2020シーズンに「時の人」になったものの、身体的な成長からくるスランプに陥って、「3人娘」の他の2人のアンナ・シェルバコワやアリョーナ・コストルナヤに遅れを取ってしまったが、今季は均整の取れたしっかりと鍛えあげた体幹を作って復活。やはり北京五輪金メダル候補のひとりとして期待が高まりそうだ。

 それ以外にもロシアには強豪がいる。スケートカナダで総合2位になった24歳のエリザベータ・トゥクタミシェワは、年齢を重ねるごとに個性的で芸術的なプログラムを抜群の表現力で演じている。SP、フリーでトリプルアクセルを計3本、完璧に跳んでトップ争いに食い込んでくるだろう。

 また、2019年GPファイナル女王のコストルナヤも、昨季の不振を脱してキレのあるジャンプと安定感のある演技を取り戻し、スケートカナダでは3位で表彰台に上った。一方、世界女王のシェルバコワは、シーズンオフに足の指を負傷し、新シーズンに向けた調整が2カ月ほど遅れているという。それでも少しずつ調子を取り戻しているようで、完全復活したら北京五輪女王候補に躍り出るだろう。

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