羽生結弦の2013年世界選手権。なぜ満身創痍でも攻めることができたのか (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 試合後に話したフリーの演技は、安全策に出るのではなく、4回転2本の構成を崩さない攻めの滑りだった。

 最初の4回転トーループを決めたが、その後の4回転サルコウは着氷で手をつくジャンプ。次の3回転フリップもエッジエラーにはなったが、それ以外はスピードをやや抑えて体力を温存し滑り切った。フリーは3位で、合計244.99点。表彰台には届かなかったが4位まで順位を上げ、髙橋は6位、無良は8位で日本の3枠確保を果たした。

「膝が痛くなった時が0%だとしたら、30〜40%には回復していたと思います。ただ体力面を含めると、なんだかんだいって20〜30%くらいかな、と」

 あっけらかんとした表情でそう話した羽生だったが、SP後は気持ちが落ち込み、フリーはさらに追い込まれていた。しかし、そんな状況でもしっかり滑り切って4位という結果を残せたのは、全日本王者のプライドとともに、五輪出場3枠を確保するという責任感、そして「自分に負けたくない」との強烈な思いがあったからだろう。

 追い込まれた中で羽生が気持ちを奮い立たせられた要因には、前年の世界選手権で右足首を捻挫しながらも3位になった過去の経験があったからとも言えるだろう。

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