2021.06.28

羽生結弦の2013年世界選手権。なぜ満身創痍でも攻めることができたのか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 演技後、「とにかく悔しい。本当に悔しい」と感情をあらわにしていたが、左膝を痛めているという情報もあった。それを問われると「フリー後でいいですか。今は言えません」と、羽生はきっぱり言った。

 この時の状態は、羽生自身が「満身創痍」と言って苦笑するほどだった。前月の2月に大阪で開かれた四大陸選手権で2位になった後、カナダに戻るとインフルエンザ感染が判明し、練習を再開できたのは世界選手権の2週間前。そこから追い込んだことで左膝を痛めてしまい、また練習を1週間休んだ。再び練習を始めたものの、4回転ジャンプはほとんど跳べない状態だった。

 試合へ向けて痛み止めも服用したが、感覚を失わないよう抑え気味にしたため痛みは残った。さらにフリー当日の朝の公式練習では、4回転サルコウで転倒した際に右足首を捻挫。両脚ともに痛みがある状態で演技に臨んだ。

 この大会は翌年のソチ五輪の国別出場枠がかかっていた。棄権するわけにはいかなかった。SPで髙橋大輔は4位、羽生は9位、無良崇人は11位。3枠確保のための上位2名の順位合計13に、ギリギリの状況だった。

「気合いです。本当に負けたくないと思ったので、どれだけ足首が痛かろうが、膝が痛かろうが、最後に倒れてもいいからやり切ろうと、気合いで持っていきました」