紀平梨花が不本意な結果から得た学び。「強気で、楽しく、前向きに」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 高橋 学●写真 photo by Takahashi Manabu

 その気概は力を与えたのだろう。

 3回転フリップ+3回転トーループをどうにかまとめ、3回転ループも成功。上半身と下半身のコーディネーションは完璧で、難解な動きも軽くやってのけた。スピンはどれもレベル4で、終盤には氷上での片手側転も披露。体の奥底から火が燃え立つような演技は、とても満身創痍には見えなかった。

SPの紀平。トリプルアクセルに挑んだSPの紀平。トリプルアクセルに挑んだ「(腰の)アクシデントは自分でも驚きましたが、しっかり練習してきた中で、ネガティブな事故ではなくて。与えられた経験というか、必要な学び、試練と捉えています」

 紀平は気丈に言った。69.74点で4位は、不調の中でやり切ったスコアだ。

 しかしSPが終わって約15分後、彼女は腰に震えるような痛みを感じていた。しばらく立ち尽くし、歩けないほどだった。4回転サルコウやトリプルアクセルどころではない。最悪、棄権もあり得た。

 だが翌々日のフリー、紀平は決然として立っている。トリプルアクセルは回避したが、得点の高いルッツを入れた。チームジャパンに貢献したかった。

「朝の練習はジャンプを一本も跳ばないようにして、本番だけ一発集中だ! と思っていました」

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