鍵山優真の成長の秘密と今後の課題を、本田武史が徹底解説 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihiro

 演技が終わった後は、やはり緊張感からか、少し疲れた表情をしていたように見えましたが、満足いく演技だったのではないかと思います。練習でやってきたものを試合でしっかりと出せたのでしょう。

 今季、鍵山選手にとっては今回の世界選手権が、初戦の関東選手権から数え、東日本選手権、NHK杯、全日本選手権、インターハイ、国体に続いて7試合目でした。試合数としては他の選手よりも多くこなしており、試合慣れができていたことも大きかったと思います。他の選手は多くて2、3試合。ヨーロッパ勢のなかには世界選手権が今季1試合目だった選手もいたといいますから。

 もともとスピード感がある選手ですが、この2年間で一気に成長してきた感があります。4回転ジャンプに関しては、質もよく、回転も安定感と余裕もあるので、いまは2種類ですが、3種類、4種類を跳ぶことができる能力を持っていると思います。

 昨季まではトリプルアクセルの失敗が課題でしたが、今季はトリプルアクセルの大きな失敗が少なくなったように思います。練習では、ただ単にジャンプを跳ぶだけでなく、曲をかけたなかで何度もトリプルアクセルを跳ぶことで、どんどん体が覚えていく。それによって自信もついたことでしょう。

 ローリー・ニコルさんが振り付けたことで、トリプルアクセルまでの構えが短くなったことがプラスになったのかもしれません。昨季までは、ジャンプの前に構えて跳びにいくという感じがあったのですが、その「構え」が短くなったことによってリズムが取りやすくなり、彼の本来のスケートの滑りを生かしたジャンプにつながって、より確率が高くなった面もあります。

 シニアデビューした今季は、海外での国際試合がなく、国内でじっくり調整ができたことがすごくプラスになっていたと思います。来季は未確定な部分もありますが、もし例年どおりに行なわれると、厳しいスケジュールでハイレベルな戦いを経験する試練に直面することがあるはずです。そこをどう調整するかがポイントになると思います。

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