羽生結弦、世界選手権フリーを詳細分析。会見で見せた笑顔のわけ (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

フリー後、悔しさをにじませながらも前を向いた羽生フリー後、悔しさをにじませながらも前を向いた羽生 チェンの得点は、羽生にとって届かないものではなかった。『天と地と』の初披露となった昨年12月の全日本選手権では、スピンが1つレベル3になる取りこぼしがあったが、非公認記録ながら215.83点を出していた。その得点よりも低い214点を出せば、逆転できる計算だった。

 しかし、羽生はミスを繰り返してしまった。前半の4回転ループと4回転サルコウは片手を突き、トリプルアクセルでは前につんのめる着氷になって連続ジャンプにできなかった。その後の3回転ループと4回転トーループからの連続ジャンプ2本は確実に決めたが、最後のトリプルアクセルも着氷を乱して連続ジャンプにできず、基礎点を下げてしまう結果に。ジャンプのGOE(出来ばえ点)は7本中4本が減点になり、成功した3本も加点が伸びなかった。スピンとステップはすべてレベル4にし、流れが大きく途絶えるところがなかった演技だけに、口惜しさが残った。

「すごく疲れました。自分のバランスが一個ずつ崩れていったので、なるべく転倒がないように頑張れたとは思っているんですけど......。全然自分らしくないジャンプが続いたので、本当に大変だった」

 演技終了後に上を向いて、「アーッ」と悔しがるような表情も見せた。ミスをした4回転2本は、跳び上がりは成功すると思わせるものだった。だが、空中で回転の軸が動いた。26日の公式練習の映像では見られなかった傾向だったが、フリー当日の公式練習の曲かけでは、冒頭の4回転ループは大きく尻が下がる着氷になっていた。4回転サルコウはきれいに決めていたが、トリプルアクセルは軸が傾斜し、最初は立って連続ジャンプにしたものの、最後のトリプルアクセルはパンクして1回転半になり、曲かけの途中で跳び直していた。そんな微妙なズレが、本番で一気に噴き出す形になった。

 結局、フリーは182.20点の4位で合計は289.18点。SP2位の鍵山優真にも逆転される総合3位だった。試合後は、「正直悔しいです」と胸の内をストレートに口にした羽生。一夜明け、リモート取材を受けたときには落ち着いた表情を見せていた。一部で体調を崩したとの情報が流れたが、それを受けてこう話した。

「皆さんが心配してくれているようですが、そこは問題ありません。ぜんそくの発作もフリーが終わった後でちょっと苦しかったかなというくらいで、会場入りが遅れた理由ではないです。ただ、ちょっとしたトラブルが続いていって......。6分間練習では影響はないと感じていたけど、最終的にちょっとしたほころびになってしまった感じでした」

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