宇野昌磨、悔しくて楽しいと笑顔。世界選手権が無観客開催の影響を語る

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

最後のトリプルアクセルで転倒し、SP6位となった宇野昌磨最後のトリプルアクセルで転倒し、SP6位となった宇野昌磨「最後のトリプルアクセルは、リプレイで見ても着氷できたはずのジャンプだったんで、(転倒は)悔しいんですけど。全体を見たときに楽しかったですし、地に足をつけたプログラムができてよかったんじゃないかな、と」

 リモート会見に出てきた宇野昌磨の声に、いっさいの暗さはなかった。92.62点の6位スタートは不本意なはずだが、取り繕っているわけではない。感覚的な本音だろう。

〈楽しく滑れるか〉

 そこに自身のスケーターとしての旋回軸を見出した宇野は、ひとつの境地にたどり着いた。銀メダルを獲得した2018年の平昌五輪後、自ら背負った"常勝の重荷"が性に合わず、楽しむことに集中することで力を出し切れる戦いがあった。ステファン・ランビエルコーチとの邂逅は運命的だったと言える。

 ただ、競技者はシビアにスコアを争う。その現実からは逃れられない。彼ほどの実力者ならば、野心もざわめくはずだ。

 楽しむことに翼を羽ばたき、次にたどり着くべき境地とはーー。

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