紀平梨花の視線の先に世界女王の座。フリーでの逆転には何が必要か (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihiro

 SPの見せ場でもある片手側転からのステップも、3つのスピンも、すべてレベル4を獲得。自己ベストの83.97点に近い高得点が期待されたが、ジャンプ2つにわずかに回転が足りなかったという「qマーク」がついてGOE(出来栄え点)で減点がつき、技術点(43.68点)が思ったよりも伸びなかった。

「とりあえず、3つのジャンプをちゃんと降りることができたので、そこはすごくよかったです。(この日の)ジャンプはまだまだ(得点を)伸ばせるジャンプでしたし、フリップ+トーループ(の連続ジャンプ)では、特にフリップの後の流れがなくて、トーループがちょっと縮こまってしまったので、そこを改善して、フリーに向けてもっともっといい演技を目指していきたいです。

 本当にたくさんの方のサポートのおかげでここまで来られたので、常に感謝してやろうと決めてきましたし、この舞台で恩返しするしかないという気持ちでジャンプに集中して試合に臨みました」

 無観客試合や「バブル方式」を経験することになった紀平は、現地入りしてから2日間の隔離生活をこなしたが、心身のコンディションをどう整えるかに努めてきたという。

「思ったよりも試合の感じがあって、しっかりといつもどおり試合に集中することができました。今季は全日本選手権しか出場していなくて、この世界選手権はすごく久しぶりの国際大会でしたので、ここまでいろいろモチベーションを保つことは大変でした。練習の成果を出せる場がなかったので、練習を積んでも達成感がなくて、練習もあまり楽しくなかったです。それでも諦めずにこの日まで頑張ってやってきたことは、よかったなと思います」

 首位のシェルバコワを2点足らずの点差で追いかける展開になったが、力強さとしなやかさを兼ね備えたスケーターに成長した18歳は、ライバルとなる16歳のロシアの新星との優勝争いにどう立ち向かうか。

 フリーでは、紀平が4回転サルコウを完璧に跳び、武器のトリプルアクセルで得点アップを図れれば、面白い勝負に持ち込めるだろう。4回転フリップと後半の3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプを武器にしているシェルバコワに対抗するためには、わずかなミスも許されないはずだ。そのことは紀平本人も十分承知していた。

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