紀平梨花と火花を散らすロシア勢。16歳シェルバコワらの底知れぬ力

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

世界選手権女子シングルSPで唯一80点台を出し、トップに立ったアンナ・シェルバコワ世界選手権女子シングルSPで唯一80点台を出し、トップに立ったアンナ・シェルバコワ 最新のフィギュアスケート女子勢力図は明白だ。

〈ロシア勢は底が知れない!〉

 その警戒心と畏敬の念は、もはや世界中で定着しつつあるだろう。2018年平昌五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワや銀メダルのエフゲニア・メドベージェワを飲み込むように、次々と新世代が台頭しつつあるのだ。

 そして今回の世界選手権でも、ロシア旋風が起きようとしている。

 3月24日、スウェーデン・ストックホルム。女子シングルのショートプログラム(SP)で、16歳のアンナ・シェルバコワが81.00点を叩き出し、世界ランキング1位の紀平梨花を抑えて首位に立っている。

「コロナ前の状態にコンディションを戻すのは、とても大変でした」

 シェルバコワはそう明かしているが、その苦労話を疑ってしまうほど、完璧に近い演技だった。大技トリプルアクセルを跳んだわけではない。しかし演技全体に漂う気配は完全無欠だった。悲しみを拾い集めたような曲『エレジー』をひとつの作品として完成させていた。

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