2021.01.25

羽生結弦は攻める。世界最高得点を連発した集中力と精神力

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 14年ソチ五輪SPの『パリの散歩道』で感じたような、自信に満ちあふれた演技。終了直後、羽生もうっすらと満足の笑みを浮かべるほどだった。

 演技構成点は、最低がトランジション(要素のつなぎ)で9.61点。動作や身のこなしのパフォーマンスは8人のジャッジが満点の10点をつけて、振り付けと曲の解釈は9点台後半の得点だったが、ジャッジ6人が満点をつけていた。

「『バラード(第1番ト短調)』は1年間しっかり練習してきましたし、NHK杯で、ノーミスで滑ってやっと自信もついたところです。やっぱり曲を聞き込んできているというのはすごく大事ですし、これまで積み上げてきたものは絶対に無駄ではなかった。

 加えて、ジャンプも不安がないとは言わないですが、一つひとつがしっかり決まっていたから、より自分がピアノの曲に乗っていけた。ジャンプはもちろん、スピンやステップも曲の一部として決まっているからこそ、評価をもらえているのではないかと思います」

 NHK杯のフリーで、自分の心の中に芽生えてきた「緊張感との付き合い方のコツ」をつかんだ羽生。選手は一度完璧な演技ができてしまえば、どうしてもそれを再現しようという意識になり、心のどこかに「守りの気持ち」が生まれてしまうものだ。だが、彼は攻め続けることで、守りの意識を吹き飛ばしている。