2021.01.18

羽生結弦がソチ後に見せた情熱。プログラムを完成させる過程に迫る

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

2014年6月のドリーム・オン・アイスで『バラード第1番』を初披露した羽生 そんな羽生が次に挑んだのが、シンプルなピアノ曲だった。

 五輪後、14年6月から始まったアイスショー「ドリーム・オン・アイス」で、新しいSPを披露した。

「僕自身、たぶん(13ー14)シーズンが終わった後は燃え尽きていたと思います。でも、(14年3月の)世界選手権の数日後からアイスショーもありましたし、(イベントなどの)仕事も立て込んでいたから、燃え尽きていることに全然気づかなかった。

 アイスショーでは、たくさんの観客の皆さんが五輪チャンピオンとして迎えてくれて......。『頑張ろう』という意欲が湧いてきました。そこで初めて、自分がいかに抜け殻だったかということに気づきました」

 ショーで一緒になったエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)ら、トップスケーターと一緒に過ごしたことも、「元の自分」に戻れた要因のひとつだという。「スケートに集中して本気で打ち込めている」と話す羽生が、新たにSPに選んだのは、ショパンの『バラード第1番ト短調』だ。

「ピアノの曲はジュニアの時にフリーで2年間使ったけれど、その時の感覚がすごく好きだったから、試合でもう一回使いたいと思っていたんです。クラシックは、物語性が明確ではないから、伝えるという面ですごく難しい。だからこそ、自分の表現の幅を広げたいという意味もあって」

 振り付けをしたのは、『パリの散歩道』と同じバトル氏。「ピアノの曲を」とだけ伝えて依頼したところ、第1候補と提案されてできあがったのがこのプログラムだったという。