4回転時代と向き合う宮原知子。完璧性を求めプログラムを物語にする (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

全日本フィギュアでSPを滑る宮原全日本フィギュアでSPを滑る宮原 ショートプログラム(SP)で、宮原の得点は66.48点と伸びていない。ループジャンプでは点数がつかず、6位というスタート。ただ表現力という点での演技構成点は、出場選手中トップだった。

「(SPは)どうなっても受け入れるつもりで、楽しく滑ろうというのが目標でした。(ジャンプは)悔しいは悔しいですけど、ステップ、スピンは練習どおりできたと思うので、結果を受け止めたいです」

 宮原は真っ直ぐな目で言った。

 試合をイメージし、シミュレーションを積んできた。ランダムに曲をかけて滑ったり、わざと疲れた状態で滑ったり、試合の緊迫感を常に意識。練習は平常心を心掛けていたが、緊張した自分をイメージすることによって、自らを鍛錬してきた。

 その成果が、フリーでは結果として出ることになった。

 リンクに立った宮原は、真っ赤に熟れた果実のような衣装に包まれていた。壮大なオペラ『トスカ』を演じるにふさわしい。自分の名前が会場にアナウンスされると、ひとつ大きく息を吐いた。鳴り出した音を一つひとつ拾うように、あるいは彼女自身が楽器であるかのように舞い始める。冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループのコンビネーションジャンプは成功。流れに乗って手足を大きく広げ、曲に乗った。ダブルアクセル、3回転ループも見事に着氷。コレオは美しく、リンクに咲いた花だった。

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