羽生結弦の決意。「光」に手を伸ばし、生きる活力を伝える (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 葛藤の末に出場を決めた全日本ゆえに、そして、このような世の中だからこそ完ぺきな演技を見せたいという強い決意を感じた。自分の演技を観てくれる人たちが笑顔になる瞬間を少しでも増やしたい、という気持ちがプログラム全体に表われていた。

 12月28日のメダリスト・オン・アイスで、羽生は一歩踏み出すきっかけになった『春よ、来い』を滑った。彼自身が『天と地のレクイエム』とともに、自分らしさや自分の色を出せていると説明していたプログラムだ。演技後の場内インタビューで羽生は「(『春よ、来い』は)この時期にピッタリというか、何よりもこの世の中に一番伝えたいメッセージだったので。少しでも(観客の)心が温まるように演技をしました」と話した。

 いつかは春が来る。

 その時へ向けて、しっかりと一歩を踏み出したいという、羽生結弦の強い意志を感じさせる全日本選手権の3本のプログラムだった。

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