2020.12.29

紀平梨花、4回転成功後も「まだ10点以上伸ばせる」。ロシア勢から刺激

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

「試合がいつあるかわからない状況でモチベーションの維持が難しかった。これまで、いろいろ挑戦してきて、これが正解かどうかもわからない気持ちでずっとずっと頑張ってきました。だから、今回はやらないという選択肢は私の中ではほとんどなかったし、挑戦する気持ちでずっとずっと過ごしていました。公式練習でも4回転のイメージを確認したり、今まで以上に4回転に時間を使いました」

 満を持して挑んだ全日本選手権の舞台。今季初戦という注目が集まるなか、日本のファンの前で大技を成功させたことで喜びもひとしおだっただろう。一方で、その成功の要因を冷静に分析した。

「一番はあの状況のあの瞬間に調子を持っていけたこと。いままでは靴の調整がうまくいかないことが多くて、跳び方が定着しないまま試合に出ていましたが、そこを克服して同じ靴で同じ跳び方のイメージを掴めて試合に臨めたことが大きかった。それに試合がなかった今季は、演技の完成度を高める練習よりも、筋トレと4回転の練習を多くできたことが成功につながったと思います」

 ロシアの新星たちが席巻した昨季はなかなか国際大会で力を発揮できず、グランプリ(GP)ファイナルでは4位に甘んじた。それでも昨年12月の全日本選手権で初優勝を決めて、今年2月の四大陸選手権では大会連覇を飾った。そして迎えようとしていた3月の世界選手権(モントリオール)が新型コロナウイルスの感染拡大によって中止に。勢いづいたはずのはやる気持ちを整理するのは簡単ではなかったはずだ。

 そのままオフシーズンに入り、練習場所を確保するのも困難な状況が続くなかで、何とかスイスに拠点を構えることができ、練習環境を整えてトレーニングに励んできた。その間、今季予定された大会が次々と中止や延期となり、ようやく出場できたのが全日本選手権だった。

「今年は昨年と比べると試合がなかったので、コツコツとやってきたと感じています。(試合での)達成感を味わえないなかで、ずっとやり続けるのは結構つらかったですし、自分がちゃんと成長できているのか、もしくは(実力が)下がっていっているのか、試合がない分、それもわからなかった。だから、なかなか自分に自信を持つことができなかったし、このままいって大丈夫なのかとか、結構いろんなことを考えた年だったかな。