髙橋大輔は今を生きる。「アイスダンスを、もっと知りたい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 髙橋は2010年バンクーバー五輪で、日本男子フィギュアとして初のメダルを勝ち取った。世界選手権でもグランプリ(GP)ファイナルでも、日本男子初の記録を打ち立てた。記録が記憶となって、大勢のファンを獲得し、男子フィギュアを人気スポーツとして定着させていった。そして18年、4年ぶりに現役復帰した全日本選手権では2位になって、再び限界を突破する姿を示したのだ。

 髙橋はアイスダンスでも、その再現をやろうとしている。

 デビュー戦となった今年11月のNHK杯では、ひと目で変化が分かった。一心不乱に肉体を改造したのだろう。肩や腕、臀部など全身の筋肉が張り詰めていた。女性をリードするホールドや持ち上げるリフトでは、一定の力が必要になる。明らかな肉体の変化が、技術云々以上に髙橋の覚悟を示していた。

 リズムダンス、フリーダンスは合計で157.25点。3組中で3位と、結果はシビアだった。決して甘い世界ではない。

 しかし、髙橋はもどかしさを抱えながらも、苦心惨憺(さんたん)の暗さは見せなかった。あくまでポジティブにアイスダンスに取り組んでいる。勝ち負けに邪念なく没頭し、スケートを楽しめる才能だ。

「(初めて髙橋がアイスダンスをして)楽しい、難しい、どっちに転ぶかだと思ったんですが......。『楽しい』っていう一言が聞けたのが、うれしかったですね。難しい、だけだったら、どうかなって思っていたので。大ちゃん(髙橋)の『楽しい』という言葉が、すごく印象に残っています」

 カップル結成の会見で、村元がもらしていた証言は啓示的である。

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