2020.10.19

羽生結弦の不屈のチャレンジスピリット。自らの力で限界値を引き上げる

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 そして、エキシビションやアイスショーのフィナーレであっても、その考えは同じだった。このアイスショーでの4回転ループ挑戦は、羽生の新しいシーズンへ向けての目標の高さを示すものだった。

 それは、羽生自身、15ー16シーズンの戦いがより厳しくなることを予想していたからだろう。

 まず、大きな目標として追いかけ続けていたパトリック・チャン(カナダ)が、1年間の休養から復帰。また、同じブライアン・オーサーコーチの指導を受けるチームメイトであり、新世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)も力を伸ばしていた。さらに、15年3月の世界選手権では、フリー得点でフェルナンデスと羽生を抑えたデニス・テン(カザフスタン)も、安定感を高めていた。他にも、世界ジュニア王者の宇野を筆頭に若手が成長してきた時期だった。

 15ー16シーズンは、18年の平昌五輪へ向けて各選手が「打倒・羽生」を掲げて、熾烈な戦いを繰り広げることが予想された。羽生の情感豊かな演技に加えて、4回転ジャンプの完成度を上げていく過程も、見どころのひとつとなっていった。

*2015年6月配信記事「羽生結弦はなぜ、アイスショーで4回転ループに3回も挑戦したのか」(web Sportiva)を再構成・一部加筆 

【profile】 
羽生結弦 はにゅう・ゆづる 
1994年12月7日、宮城県仙台市生まれ。全日本空輸(ANA)所属。幼少期よりスケートを始める。2010年世界ジュニア選手権男子シングルで優勝。13〜16年のGPファイナルで4連覇。14年ソチ五輪、18年平昌五輪で、連続金メダル獲得の偉業を達成。2020年には四大陸選手権で優勝し、ジュニアとシニアの主要国際大会を完全制覇する「スーパースラム」を男子で初めて達成した。 

折山淑美 おりやま・としみ 
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。92年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、これまでに夏季・冬季合わせて14回の大会をリポートした。フィギュアスケート取材は94年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追っている。

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