2020.10.19

羽生結弦の不屈のチャレンジスピリット。自らの力で限界値を引き上げる

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

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「曲をかけた通し練習でも、(4回転サルコウと4回転トーループの)両方がそろわないことが結構ありました。サルコウを降りた後に疲労感があるというか......。トーループを続けて2本なら同じことをやればいいと思うけど、サルコウとトーループはまったく違うもので、感覚のズレが結構あります」 

「ファンタジー・オン・アイス」で演技する羽生結弦「ファンタジー・オン・アイス」で演技する羽生結弦  それでも、15年5月のアイスショー「ファンタジー・オン・アイス」では、難度の高いジャンプに果敢に挑戦する姿を見せた。

 まずオープニングでトリプルアクセルを跳んで客席を沸かせると、第1部は10ー11シーズンのエキシビションナンバーだった「ヴァーティゴ」を披露。3回転ループなどのジャンプを含め、スピンやステップを組み込んだ演技で、客席からは大歓声が上がった。

 さらに羽生は、フィナーレで4回転トーループをきれいに決めた。最後のジャンプ合戦ではハビエル・フェルナンデス(スペイン)とともに滑り出すと、4回転サルコウを決めたフェルナンデスに続き、4回転ループに挑んだ。羽生が国別対抗のエキシビションのフィナーレで成功したが、当時は、まだ公式戦での成功者がいないジャンプだった。

 一度転倒し、再度挑戦したが、今度は2回転になってしまって苦笑い。しかしそこから負けん気を見せて、他の選手がリンクから去った後に3回目のトライをしたが、それも転んでしまった。最後に羽生は、客席に向かって両手を合わせて謝るしぐさをしながらリンクを去った。

 14ー15シーズンに、結局完成させることができなかった「演技後半に4回転を入れるプログラム」について、「翌シーズンも挑戦する」と明言していた羽生。練習では4回転トーループやサルコウだけではなく、ループやルッツなどの4回転にも挑んでいた。その理由を羽生は「4回転サルコウが、(競技会で)今できる一番難しいジャンプ。その確率を上げるためにも、もっと難しい(ループやルッツなど他の)4回転に挑戦することで、精神的な限界値を上げられると思うから」と意欲的に語っていた。