羽生結弦、ソチ五輪シーズンの進化。「全試合で精一杯の力を込めて」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

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 翌シーズンはショートプログラム(SP)にも4回転トーループを組み込んだ。初出場だった世界選手権では、激しい捻挫(ねんざ)をしたSPは7位発進。フリーは中盤のつなぎで転倒するアクシデントもあった。それでも、4回転トーループとトリプルアクセルでは高いGOE(出来栄え点)加点をもらうなど各要素をしっかりこなし、1位のパトリック・チャンに2.71点差の2位の得点を獲得して追い上げ、銅メダルを獲得した。

 そして、羽生が拠点をカナダに移した12ー13シーズン、新たに挑戦したのは他の選手のようにフリーで4回転トーループを2本にするのではなく、4回転サルコウを入れる構成だった。

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 その決断の背景には、12年世界選手権で複数種類4回転時代の萌芽が見えていたことがある。

 フリーでは、優勝したパトリック・チャンが4回転トーループ2本、2位の髙橋大輔と3位の羽生は共に1本と、表彰台の3人が4回転1種類だったが、4回転サルコウを得意とするミハエル・ブレジナ(チェコ)やハビエル・フェルナンデス(スペイン)は4回転サルコウも入れる2種類2本の構成に挑戦。また、ミスで下位だったケヴィン・レイノルズ(カナダ)は後半のトーループを含む2種類3本の構成に挑んでいた。さらに、この年12月のGPファイナルで、フェルナンデスが前半のトーループとサルコウに加えて後半にもサルコウを入れる4回転3本の構成に成功。僅差でメダルを逃したが、フリーの得点は1位だった。

 そんな状況のなか、羽生は12ー13シーズン初戦のフィンランディア杯で4回転2本をしっかりそろえ優勝。しかし、その後の大会では4回転サルコウのミスが続いて納得できる結果は残せず、その完成はソチ五輪シーズンに持ち越した。

「僕は2シーズンかけて完成させられることが多い」と、羽生は冷静に自己分析していたが、2種類の4回転への挑戦はその後、彼の4回転3本に向けた進化のスピードを速めたいという思惑もあっただろう。

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