2020.10.11

本田真凜の底力。「前代未聞のハプニング」に超絶対応できた要因は

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

「提出したCDに『フリー』と書いてあったんです。だけど違っていた。(3月以来)久しく聞いていなかったので、最初は他の人の曲がかかったと思ったんですけど、『いや、これは自分の曲だ』と気づいた。取りに行ってもらったCDが来るのを待とうとしたんですけど、ジャッジから『1分経ったら失格だよ』と言われて、これでやるしかないと思いました」

 スパンコールがきらきら輝く淡い紫色の華やかなコスチュームを身に纏った真凜は、本人曰く「前代未聞のハプニング」に動じることなく、ほぼ即興の演技を可憐に披露した。ステップなのかコリオシークエンスなのか、わからない部分もあったが、右肩痛のために「跳ばない」と言っていた3回転ジャンプも投入。トーループを2度も跳んだうえ、連続ジャンプも3つ成功させ、さらにはレイバックスピンからビールマンスピンまでこなして、約4分間を滑りきった。

 結局、フリーでは93.66点の5位と巻き返して総合7位に浮上。12月の全日本選手権出場に向けて、第一関門を突破した。

「まさかこの曲でいきなりぶっつけ本番は考えていなかった。ほぼほぼアドリブで滑り切ったこと自体が驚きですが、やっぱりしっかりしなきゃいけないことは、きちんとしないといけない」と、本田コーチも苦笑いするしかなかった。

 演技後のリモート会見に、スマートフォンを手にした真凜が興奮しながら現れた。

「まだドキドキしている。みんなから『ヤバすぎ』って連絡があって......(笑)。この曲は、3月にステファン先生に作ってもらったプログラムだったんですけど、3月に滑ったきりで、しかもジャンプもスピンも入れたことがなくて(笑)。振付を忘れてしまっていたので、いろいろ考えながらほとんどアドリブで滑りました。『本当にどうしよう。こんなことある?』って思って、びっくりしました!

 キスクラで待っている時に、なかなか点数が出なかったので『失格や』と思ったけど、点数が出て(滑り切れたことは)大満足です!」

 曲間違いのハプニングに見せた見事な対応力。無事に乗り越えることができた要因は、彼女の持つ表現力があったからこそと言えるだろう。底力を発揮した19歳は、終始笑顔を見せながら、ことの顛末を冗舌に振り返っていた。

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