2020.10.11

本田真凜の底力。「前代未聞のハプニング」に超絶対応できた要因は

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 今季の新SP『アイム・アン・アルバトロス』はシェイリーン・ボーン氏が振り付けたものだが、真凜自らのアイデアが盛り込まれたプログラムになっているという。

「去年のエキシビションを手直ししたもので、振付のベースを自分で作ってからシェイリーンさんにアレンジしていただいた。そういう部分が新しいので、よくできればいいなと思っています」

 お気に入りのプログラムということもあるのだろうか。気合いの入ったコスチュームが目を引いた。「アルバトロスという格好いい鳥をイメージしている。手袋も鳥の爪のような感じになっています」と斬新なデザインのゴージャスなパンツスタイルを着こなし、ダンサブルでアップテンポなナンバーに乗って演技を披露した。

「まずはショートを通過しないといけないことを思って滑っていました。自分のイメージどおりにいかなくて、どうしても途中で止めてしまいそうになることが何回もあったんですけど、『ダメ』と言い聞かせた」

 何とかSPで踏みとどまると、10日のフリーでは、すべてのジャンプを2回転にして、演技の完成度を上げてミスを最小限にする戦略で行くことを明かしていた。

ハプニングに見舞われながら滑り切った本田真凜、フリーの演技ハプニングに見舞われながら滑り切った本田真凜、フリーの演技  しかし、まさかこんなハプニングが起こるとは誰も予想していなかった。真凜が大会側に提出したフリーの音源が、今季のエキシビション用として使った曲だったのだ。それは3月にステファン・ランビエル氏が振り付けたレディー・ガガの『アイル・ネバー・ラブ・アゲイン』。今季は昨季の『ラ・ラ・ランド』を持ち越して使うと発表しており、もちろん今大会も『ラ・ラ・ランド』を予定していた。真凜自身もそのつもりでポジションについていた。

 しかし、曲が流れた瞬間、「あれ?」と本田武史コーチを見てから、真凜は演技をせずに審判席に向かった。一方、本田コーチは女性更衣室に向かったが、中には入れず、妹の望結に正規の音源を取りに行ってもらい、リンクに戻ってきた。だが、すでに時遅し。真凜はやり直しては決められた時間に間に合わないと腹をくくって、『アイル・ネバー・ラブ・アゲイン』で演技を始めていた。