2020.10.06

三原舞依がいるべき場所に戻ってきた。「この瞬間を待っていた」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 その日を待ち望んだ三原は言う。

「試合が近づくにつれ、エントリーシートとかが配布されて、これから試合があるという嬉しさを感じて。楽しみでしかなかったです。よし、行くぞ!って。それでリンクに入る前、中野(園子)コーチには、『絶対できる、最後まで笑顔で』って言われて。ああ、この瞬間を待っていたんだって思うと嬉しくて」

 スケートへの愛が弾けていた。その勢いが、彼女に味方をしたのかもしれない。

 三原は、眠りから覚めた妖精のように舞い始める。3回転ルッツ+2回転トーループのコンビネーションジャンプを危なげなく成功。ダブルアクセルもきれいに降りた。3回転ループはわずかに乱れたが、プログラム使用曲「イッツ・マジック」で魔法をかけられたような、その世界に誘う引力を持った演技だった。無観客でなかったら、万雷の拍手が降り注ぎ、会場は温かさに満ちていただろう。

 演技後、両腕を高く上げた三原は、素直に喜びを表現していた。リンクサイドで中野コーチに抱き着き、頭を撫でられ、顔をくしゃくしゃにする。子供のような無垢さで、花を咲かせるような笑顔だった。

 得点は59.69点で、3位につけた。スコア以上に、記憶に残る復活の瞬間だった。

「この舞台に立たせてもらった感謝の気持ちを、プログラムに込めました」

 その言葉は、真摯な三原らしい。