2020.10.05

羽生結弦は新たな地平を切り開く。ロシアで語ったブレない信条

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Noto Sunao(a presto)

「やっと自分が目標にしてきた構成に体がついてきたので、そういった意味でも『やっと始まるな』と感じます。ただ、今は五輪シーズンが始まったというよりも、一つひとつの試合を考えなければいけないと思う。この試合(ロシア大会)では、4回転ルッツやショートも注目されると思いますが、まずはフリーの曲かけ練習でできたこと、できなかったことを反省して調整し、次に向けてしっかりとやっていきたいです」

 こう話す羽生だが、ロシア大会の会場であるメガスポルトにも特別な思いがあった。

「シニアに上がってからの2年間はここでのグランプリシリーズに出ていたので思い出深いですし、『帰って来たな』という感じです。モスクワで合宿したこともあったので、すごく懐かしくて、落ち着いて試合に臨めるのではないかなと思います」

 そうした思い入れのある場所であることも、彼が4回転ルッツという新たな挑戦を選択したひとつの理由かもしれない。

 曲かけ練習後も、ブライアン・オーサーコーチのアドバイスを聞きながら4回転ジャンプに挑んだ。失敗しながらも自分の気持ちを盛り上げるように両手をクルクルと回す仕草をし、イーグルからの4回転ループに成功。何度かパンクを繰り返した4回転ルッツも、最後はきれいに決めて客席の歓声を誘った。

「(4回転)ルッツのパンクが多かった理由は、フリーの曲かけの後ということもあったし、しょうがないと思っています。ただ最終的に、練習中に体力を回復させてルッツもしっかりと軸の取れたものを跳べているのでよかった。いい感じで調整しながらできています」