羽生結弦が感じたライバルと競い合う重圧、そして幸せ (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Noto Sunao(a presto)

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 自身が完璧な演技で優勝した時も、ライバルとしてフェルナンデスの名前を口にしていた。その2015年12月GPファイナル、フリー演技のこと。SPで史上最高の110.95点を出した羽生が演技を始めた時、それを見ている記者としては、高得点への期待感より不安の方が上回っていた。

 試合後に、「フリーの演技前に連戦の疲労がピークに達していた」と吐露した羽生。彼が常々話しているように、SP、フリーともミスのない演技をするのは極めて難しい。この大会では、ノーミスの演技をすれば、11月のNHK杯の322.40点を上回る結果になる見通しだった。だが公式練習の動きや期待による重圧を考えると、「2大会連続で記録を更新できるのか」という疑問が、どこかにあった。

 6分間練習で少し腰が落ちる着氷になっていた4回転サルコウを完璧に決めても、次の4回転トーループをきれいに決めても、その不安は消えなかった。

 その後も、ジャンプをひとつ決めるたびに安堵(あんど)と不安が交互に去来する。ようやくホッとひと息つけたのは、このシーズン序盤のオータムクラシックやスケートカナダでミスが出ていた最後の3回転ルッツをきれいに決めてからだった。

 それは、羽生自身も感じていたことだった。

「ジャンプの不安要素を修正できないまま直前練習が終わってしまいました。それに加えて、パトリック(・チャン)選手や宇野(昌磨)選手の演技がよかったということが観客の大歓声でわかっていました。極めつけは、僕の前のハビエル(・フェルナンデス)が200点超えで『やばいな......』と。自分で自分を追い込んだところもありましたが、NHK杯の前からたくさん練習できていたので何とかなったのだと思います。演技の途中で徐々に不安はなくなってきましたけど、明確な記憶としてあるのは、前半の4回転トーループを跳んだ時に少しホッとしたことだけです」

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